百科事典

母体・哺乳期プレバイオティクス投与による子ヒツジのルーメン内プロピオン酸産生菌の増加

背景

ルーメン(第一胃)内で生成されるプロピオン酸は、反芻動物にとって肝臓での糖新生を通じたエネルギー利用に重要な揮発性脂肪酸である。プロピオン酸産生に関わる細菌の増加は、飼料からのエネルギー利用効率の向上につながる可能性があり、母体を介した胎児期プログラミングや哺乳期の早期介入によってこうした機能的な細菌の定着を促す試みが注目されている。

結果

双子を妊娠した母羊とその子ヒツジを、母体・子ヒツジそれぞれについてプレバイオティクス(マンナン豊富画分:MRF)投与の有無で4群(Con_Con、Con_MRF、MRF_Con、MRF_MRF)に分け、ルーメン細菌叢を解析した。

生後20週齢において、コハク酸をプロピオン酸へ変換する要の細菌とされるSucciniclasticum ruminisの存在量は、MRF投与を受けたすべての区で対照区(Con_Con)より多い傾向を示した。特に母体・子ヒツジ双方にMRFを投与した区(MRF_MRF)では、対照区との差が最も大きく、統計的に有意であった(log fold-change約1.9)。

子ヒツジのみ投与した区(Con_MRF)でも有意な増加が認められたが、母体のみ投与した区(MRF_Con)では明確な有意差は確認されなかった。

要約

母体・哺乳期を通じたプレバイオティクス投与、特に母体と子ヒツジ双方への投与を組み合わせることで、生後20週齢時点でプロピオン酸産生に関わるSucciniclasticum ruminisというルーメン細菌の増加が確認された。

今後の可能性

母体を介した胎児期プログラミングと哺乳期の早期介入を組み合わせたプレバイオティクス投与は、子ヒツジのルーメン内プロピオン酸産生菌の定着を促し、エネルギー利用効率の改善につながる飼養管理技術として応用が期待される。

ただし本研究では増体量など成長性能そのものには統計的な有意差は確認されておらず、生産性への効果については今後さらなる検証が必要である。

 

(Corrigan A et al., Animals. 2026)