百科事典
ケストースとシロイルカの腸内細菌
背景
飼育下の海洋哺乳類において、腸内環境の悪化は健康管理上の課題とされており、近年は腸内細菌叢の調整を通じた健康維持が注目されています。プレバイオティクスは、特定の腸内細菌に働きかけることで、腸内の恒常性と免疫バランスの改善が期待されています。本研究では、シロイルカに対してケストースを投与し、その腸内細菌叢への影響を評価しました。
結果
8週間のケストース摂取後、炎症との関連が示唆されるTuricibacter属の相対存在量が47.2%から0.659%へと有意に減少しました(P = 0.050)。同様に、BacteroidesおよびActinobacillus_g1も有意に減少しました(P = 0.050)。
要約
ケストースの摂取は、シロイルカの腸内において炎症関連菌であるTuricibacterを含む複数の菌属の有意な減少を引き起こし、腸内環境の改善が示唆されました。
今後の可能性
プレバイオティクスは、炎症関連菌の抑制を通じて飼育下海洋哺乳類の健康維持に貢献する新たな栄養介入手段となる可能性があります。
(Fujii T et al, JVMS, 2025)