百科事典
腸内細菌と犬の慢性腎臓病
背景
腸内細菌叢の異常は、慢性腎臓病(CKD)患者において注目されており、腸内環境の乱れが病状に影響を与えると考えられています。しかし、犬のCKDにおける腸内細菌叢の特徴についてはほとんど知られていません。本研究の目的は、健康な犬とCKDの犬における腸内細菌叢プロファイルの違いを比較し、CKD進行の各段階における変化を明らかにすることでした。
結果
CKDの犬では、が有意に増加しており(p < 0.001)、その他の尿毒症性毒素を生成する細菌(Bacteroidaceae、Pseudomonadaceae、Clostridiaceae)も増加していました。健康な個体では尿毒症代謝物が排出されますが、CKDを抱える個体ではこれらが体内に蓄積し、腎機能に悪影響を与えると考えられます。ヒトにおいては、これらの毒性アミノ酸代謝産物が腎疾患の進行を加速させることが知られており、犬でも同様のメカニズムがCKDの発症や進行に関与している可能性が示唆されます。
要約
CKDを抱える犬では、腸内細菌叢に変化が生じ、尿毒症性毒素を生成する細菌の増加が確認されました。
今後の可能性
腸内細菌叢の異常と尿毒症性毒素の生成がCKDに与える影響について、さらなる解明が必要です。
引用文献:Kim KR et al, Front Vet Sci, 2023